はじめに
本ジャーナルでも精力的に特集している「デジタル田園都市国家構想」。デジタル技術を活用することによりその地域ごとの個性を活かしながら、地方の社会課題の解決や魅力向上のブレイクスルーを実現し、地方活性化を加速させるこの構想は、現在地方創生に向けて取り組む自治体の事業の柱となっています。これまで、岐阜県羽島市のメタバースを活用した不登校児向けの居場所づくりや長野県松本市のAIを使ったオンデマンド交通の実装などを取り上げてきました。今回は岐阜県恵那市の動きについてフォーカスを当てていきたいと思います。
恵那市の取り組み
恵那市は岐阜県の南東部に位置している自治体で、長野県や愛知県との県境に面しています。人口は令和5年(2023年)8月の時点で約45,000人を有しており、岐阜県内では13番目の規模となっています。東には恵那山、南には焼山、北には笠置山に囲まれた山がちな地形で、市内には木曽川や阿木川、矢作川も流れており、季節ごとに違った表情を楽しめる豊かな自然が特徴な都市となっています。中でも珍しい形をした奇岩が多いことで知られている景勝地の恵那峡が有名です。
この恵那市では日本郵便株式会社とタッグを組んで、デジタル田園都市国家構想交付金を活用して「スマートスピーカーの活⽤による安⼼・安全な暮らしづくり」事業を開始しました。少⼦⾼齢化の進行により⼈⼝減少が著しい地域において、スマートスピーカーを活⽤することにより持続的なコミュニティの維持や形成に向けた⽣活⽀援などを実施することを目的としています。このスマートスピーカーについて恵那町は令和4年(2022年)3月に策定した「第2期恵那市ICT活用推進計画(基本方針)」の中でも、「第4章 施策の取組」内で取組の検討例として「独居老人への IT 機器貸与(スマートスピーカー、タブレット等)」として活用の方針を示唆しており、デジタル田園都市国家構想交付金を使って実現した形となりました。
続いて、具体的な施策内容を見ていきたいと思います。今回の事業では恵那市内の飯地町の全255世帯を対象として実施され、モニターとスピーカーが一体となったスマートスピーカーを各世帯に設置。このスピーカーを通じて3つの事業が行われ、1つ目の「⾏政情報のデジタル配信サービス」は全世帯を対象とし、⾏政サービスや保健衛⽣、地域イベントなどの各種情報のタイムリーな提供を行います。2つ目は高齢者世帯を対象とした「⽣活みまもりアプリ」の実装です。⽇本郵便株式会社のオンラインサービス「ぽすくまみまもりアプリ」を活⽤し、高齢者の体調や服薬確認などを通して⽇常⽣活の見守りを図ります。3つ目は「災害発⽣危険通知サービス」です。台風や大雨などの災害発⽣が懸念される際、⽇本郵便株式会社のクラウドサーバーを通じて情報伝達および安否確認を実施します。
恵那市ではデジタル田園都市国家構想交付金から32,529千円分の採択を受けています。また令和5年(2023年)度の6月補正予算でスマートスピーカー関連事業の予算として33,519千円が計上されています。設置・運用のテストを経て、10月頃を目途にして順次運用を開始していくとしています。また、将来的には恵那市全市への展開も視野に入れているとしており、今後の動向にも注目が集まります。
まとめ
スマートスピーカーは急速に高齢化が進む日本社会において、孤独死対策や見守りに役立つことが期待されています。伊那市でも今後全市への展開を検討するとしており、その他の自治体にも同様の取り組みが広がっていくことが予想されます。
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執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<恵那市HP:恵那市役所報道発表資料 令和5年5月 22 日>
<恵那市HP:第2期恵那市 ICT 活用推進計画(基本方針)>
<恵那市HP:令和5年度6月恵那市補正予算>
<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算)岐阜県>