はじめに
岸田政権肝いりの政策である「デジタル田園都市国家構想」が令和3年(2021年)に開始し、「デジタル田園都市国家構想交付金」の採択を受けた自治体で多彩な事業が行われています。本ジャーナルでも、シリーズとしてデジタル田園都市国家構想交付金の採択を受けた自治体の地方創生に向けた取り組みについて取り上げてきました。これまで神奈川県箱根町の消防通報した際にスマートフォンで映像を送信して状況把握に役立てる事業などの事業を紹介しています。今回は福井県鯖江市の取り組みについて、フォーカスをしていきたいと思います。
鯖江市の取り組み
鯖江市は福井県のほぼ中央に位置する都市で、北は県庁所在地である福井市、南は越前市に隣接しています。令和5年(2023年)8月の時点で約67,000人の人口を有し、福井市、坂井市、越前市に次ぐ福井県第四位の規模となっています。「めがねのまち」とPRしているように、国内で生産されるメガネフレームのほとんどがこの鯖江市で生産されることで知られ、他のメガネ関連の産業も盛んな工業都市として知られています。
この鯖江市では、社会体育の推進や市民がスポーツを親しむ機会をつくることを目的に小・中学校の体育施設を学校教育に支障のない範囲で市民に開放する「開放学校」という事業に取り組んでいます。市民の健康維持・向上にも資するこの開放学校事業ですが、利用者は鍵の受け渡しのために地区の公民館などの別施設まで出向く必要があることや鍵の紛失などのトラブルが発生しており、運営をしていく上で利便性の向上やトラブル解消が課題となっていることが、令和5年(2023年)2月の鯖江市議会で言及されています。そこで鯖江市がデジタル田園都市国家構想交付金を活用して開始したのが、「開放学校リモートキー化事業」です。
この事業では、スマートフォンや専用のリモコンなどの電子機器で鍵の施錠管理ができる「スマートロック」システムを鯖江市内の小・中学校に導入。利⽤者が利⽤施設などの開錠をするためのパスワードをインターネット上から遠隔で発⾏できるようになり、利⽤者はキーレスで施設に入場・利⽤することが可能になります。また、導入対象となる小・中学校の体育館は、災害発生時には避難所として使⽤されることから、スマートロックを導入することで迅速な避難所開設が行えるようになり、市⺠の安全・安⼼の確保にもつながるとしています。
導入するスマートロックシステムは、株式会社構造計画研究所の提供している「RemoteLOCK」を採用。このRemoteLOCKはWi-Fiを通じてインターネットに接続し、クラウド上で利用者の入室管理が可能になるサービスで、利用者ごとに個別の暗証番号を発行・管理するため、キーレスでも安全なカギの受け渡しが実現されます。また実際にいつ誰が解錠したかの実態把握が可能で、セキュリティ面にも優れたサービスです。
鯖江市では開放学校リモートキー化事業に令和5年(2023年)度予算に8,000千円を計上。デジタル田園都市国家構想交付金においても同額の8,000千円分の採択を受けています。
まとめ
デジタル田園都市国家構想交付金を活用した取り組みは地域の特色がはっきりと現れています。今後、デジタル田園都市国家構想交付金の公募が新たに行われた際には、鯖江市のように公共施設を利用する際の利便性・セキュリティの向上に取り組みたい自治体は少なくないと考えられます。
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執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<鯖江市HP:開放学校について>
<鯖江市HP:鯖江市議会議事録 令和5年第438回定例会(第1号) 本文 2023-02-24>
<株式会社構造計画研究所HP:スマートロック(電子錠)ならRemoteLOCK利用事例 公共施設・自治体>
<鯖江市HP:令和5年度当初予算の概要>
<内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局HP:デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)交付対象事業の概要 分野・都道府県別(令和4年度第2次補正予算) 福井県>