はじめに
近年、テクノロジーの急速な進化により、私たちの生活やビジネスは大きく変わりつつあります。その中でも、デジタルトランスフォーメーション(DX)は、ビジネスや組織の在り方を根本的に変える力を持っています。このDXによる変革の波は日本の地方自治体にも押し寄せており、地方創生を進める力になっています。これまでも本ジャーナルでは、福島県福島市や埼玉県川口市、広島県広島市の事例を紹介してきました。今回は神奈川県横須賀市での窓口業務のDX化に関する取り組みについて見ていきたいと思います。
横須賀市の取り組み
横須賀市は神奈川県の南東部の三浦半島東部に位置する自治体です。幕末の黒船来航の地として知られ、それ以来軍港の町として発展してきました。その一方で東京湾唯一の無人島である猿島や歌川広重の浮世絵にも描かれた立石公園など、豊かな自然を誇ることでも知られ、様々な魅力を備えた都市です。
この横須賀市では少子高齢化の進行によって人材資源が減少する中で、市民に良質なサービスを提供し続けるために、業務生産性を向上させる情報通信技術(ICT)の活用が不可欠との考えから、「横須賀市デジタル・ガバメント推進方針」を策定し、ICTの活用やDX化に向けた取り組みを進めてきました。この方針内でも「行政サービスのスマート化」として、窓口業務を含めた業務の最適化をしていく方向性が示されています。
続いて、具体的な取り組みを見ていきます。横須賀市では令和3年(2021年)に株式会社アスコエパートナーズと共同で窓口業務支援システム「手続きナビ」と「申請サポートプラス」の提供を開始しました。手続きナビはブラウザからアクセスできるサービスで、引っ越しによる転入出届や結婚、出産などのライフイベントに伴う手続きなどを簡単に調べることが出来るというものです。簡単な質問に回答するだけで必要な手続きや持ち物、手続き場所などを確認することが可能で、担当課が異なる手続きも一括で知ることができるため、市民が手続きを調べる際の利便性向上や手続きの対応漏れを減らすことができます。
一方の申請サポートプラスはブラウザ上から必要事項を入力することで、横須賀市役所に足を運ぶ前に申請書類を作成することができるサービスです。利用者は発行されるQRコードを使うことでスピーディーに書類を発行でき、記入ミスや記入漏れなども減り職員負担も軽減されました。これらのサービスを導入したことで、従来は100分ほどかかっていた3~4月の繁忙期の窓口での待ち時間が、導入後は約38分と1時間以上の待ち時間削減を達成しました。また手続きナビは使いやすいUIや親しみやすいデザインが評価され、令和3年(2021年)度の「グッドデザイン賞」を受賞するなど、様々な角度から高い評価を受けています。
まとめ
地方自治体におけるDX化は、行政サービスの向上、地域経済の活性化、市民参加の促進など多くのポテンシャルを秘めています。これらの取り組みが進むことで、より魅力的な地域づくりや持続可能な社会の実現が期待されます。また横須賀市の事例のように、DX化で窓口での待ち時間削減を実現することは市民サービスを向上させ、住民の満足度を引き上げることができます。
グローカル社では、自治体の情報を横断して一括検索できるツール「G-Finder」を活用した調査サービス「G-Finderレポート」を提供しています。自治体に関する調査や、自治体への提案・入札参加をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。
執筆者 グローカル編集部
地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。
出典:
<横須賀市HP:横須賀市デジタル・ガバメント推進方針>
<横須賀市HP:「手続きナビ」と「申請サポートプラス」の運用を開始~必要な手続きを漏れなく調べて、ウェブフォームで申請書をラクラク作成~>
<総務省HP:手続ナビや申請サポートの活用で住民異動手続の待ち時間を60分短縮 【神奈川県横須賀市】>