地域課題解決のためのスマートシティ構想ー山口県周南市の事例

はじめに

 山口県周南市で、令和3年(2021年)3月から進行中の「周南市スマートシティ構想」に焦点を当てます。最近では、先端技術やビッグデータ等などを積極的に活用して地域課題解決に取り組むために、全国の自治体でスマートシティの取組が広まっています。この取組みは、2年前の令和3年から(2021年)実施され、令和5年の施政方針演説でも引き続き「周南市スマートシティ構想」が取り上げられ、モデル地区事業やスマート市役所の実現が計画されています。本記事では、周南市のスマートシティの取組事例を紹介します。

地域課題解決のためのスマートシティ構想ー山口県周南市の事例

 周南市は、山口県の東南部に位置しています。北に中国山地、南に瀬戸内海を臨み、大規模なコンビナートが広がっています。また、市の総面積の8割近くを林野が占め、本州で唯一のナベヅル飛来地があるなど、豊かな自然に囲まれている町です。

 周南市スマートシティ構想は、令和5年(2023年)2月21日の施政方針で取り上げられており、藤井律子市長は「令和5年度は、「周南市スマートシティ構想」に基づき、モデル地区事業やスマート市役所を目指した取組の実施等により、様々な分野のDX化を進めてまいります。学校施設等の公共施設の予約や粗大ごみ収集の受付等についてDX化を進めるほか、オンライン申請サービスの推進や地理情報システムの構築を図り、デジタル技術を活用した便利で暮らしやすい社会の実現に取り組んでまいります。」と述べています。令和3年(2021年)3月に策定され、構想期間は令和3年(2021年)から令和12年(2030)までの10年間とされています。市として「多様なデータや先端技術等を活用し、活力ある豊かなスマートシティ周南へ変革する」という理念が掲げられています。令和5年(2023年)予算では、スマートシティ推進事業として59,037千円が計上され、スマートシティの推進(モデル地区における住民等との協働等)や自治体DXの推進(オンライン申請サービスの推進等)のために活用されることになっています。この長期構想の背景としては、人口減少と高齢化社会の進展、そして2019年12月以降の新型コロナウィルスの感染拡大に対応し、業務効率化や住民サービス向上のために自治体DXを推進する必要性がありました。

 近年での特長的な取組としては、周南市在住の高齢者に向けた町の知りたい情報が簡単にわかるデジタルのパンフレットが、周南公立大学に事業を委託して2023年3月に作成されています。地元高齢者にも協力を得て、高齢者にも分かりやすいデジタル・ディバイド対策(情報通信技術を利用できるものと利用できないものとの間に生ずる格差対策)として、スマートフォン等でQRコードを読み込みだけで知りたい情報を得られるパンフレットが作られました。他の自治体でもデジタル・ディバイド対策として、群馬県の長野原町とNTTドコモが連携協定を結び、スマートフォンを持っていない世帯にスマホを貸与して、操作に不安を抱える住民向けに「ドコモスマホ教室」を開催されるなどの取組が行われています。

まとめ

 地方自治体のDX化は、地域住民の便益向上や職員の業務効率化等を目指している取組が多くあります。今回の周南市の事例では、それだけでなくデジタル・ディバイド対策としてのパンフレット制作の取組のように、デジタルに不安を感じる住民に対して大学と協力してITリテラシー向上を図ることを目指されている試みが行われていました。群馬県長野原町では、民間企業もNTTドコモも協力している事例もありました。自治体DXには教育機関や民間企業の協力も欠かすことができません。産学官が一体となり、今後とも自治体のDXが推進されていくことが期待されます。

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出典:

山口県「デジタル推進局デジタル政策課」
山口県「やまぐちデジタル改革基本方針」
山口県「令和5年度当初予算」
山口県「山口県、(株)日本政策金融公庫及び (一財)山口県デジタル技術振興財団とのY-BASEを核とした「地域のDX推進に係る連携に関する協定」締結式の開催について」
やまぐちDX推進拠点Y-BASE
埼玉県「埼玉版スーパー・シティプロジェクト」

グローカル編集部

グローカル編集部

地方創生コンサルティング、SaaS/レポートサービスを通して地域活性化を支援する、グローカル株式会社の編集部。地域活性化を目指す事例や自治体・地域企業/中小企業のDX化に向けた取り組み、国の交付金・補助金の活用例を調査・研究し、ジャーナルを執筆しています。
グローカルは、国内全体・海外に展開する地方発の事業をつくり、自立的・持続的に成長する地域経済づくりに貢献します。